従者は惜しみない愛を捧げる―――流浪の落ち延び姫と双頭の獅子
「それで、いつここを発つのですか?」
「早いに越したことはありませんが、まだ人々が浮かれ騒いでおりますし、祝祭はしばらく続くようです。あちらもこのような時に騒ぎを起こしたくはないでしょうから、その隙を狙いましょう。できれば明日の夜明け前には――」

 そこでリナルドはわずかに眉を寄せ、視線を落とした。

「続けてちょうだい、リナルド」

 リナルドはなおも言い淀んでいたが、やがてゆっくり片膝をついた。

「アマーリア様、どうかお覚悟を。おそらく今度の旅は長く、つらいものになりましょう。今までとは比べものにならないほど」
「そうでしょうね。陛下が待ち焦がれていたお世継がようやく生まれたのですもの」

 淡々とした答えに驚いたのか、リナルドが伏せていた顔を上げた。

「アマーリア様?」
「姉上にお祝いを申し上げたいけれど……無理でしょうね」
「ええ。さすがに」

 動揺しているせいだろうか。いつも落ち着き払っている彼が今日ばかりは年相応に、いや、むしろどこかあどけなくさえ見える。

 二人が出会ったばかりのころを思い出し、アマーリアはかすかに微笑んだ。
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