従者は惜しみない愛を捧げる―――流浪の落ち延び姫と双頭の獅子
 レマルフィ王国に内乱が起きたのは四年前のことだ。
 アマーリアは十五歳で、はじめは状況を理解できず、ただ怯えていたことを覚えている。

 ことの発端は、二人の権力者の対立だった。

 穏やかで堅実な国王レンツォと、そのいとこで、領土拡大を図ろうとする野心家の国軍最高司令官ガルディニ――皮肉なことに母国を愛するがゆえに彼らの溝は深まり、ついに王への反旗が翻されたのだ。どちらも人望が篤く、争いは国を二分する苛烈なものとなったが、最終的に勝利したのは王ではなかった。

 ガルディニは新国王として即位した後、前王レンツォを離島に幽閉し、アマーリアの姉カタリーネを妻にした。人質としても、王家の高貴な血筋を守って国民の支持を得るためにも、彼女が必要だったのだ。

 父と姉が盾となってくれたため、アマーリアはなんとか落ち延びることができた。その時点で仕えていた多くの者が姿を消したが、護衛や侍女など忠実な数名は付き従ってくれた。

 追手に怯えながら、身をやつし、短期間で移動を繰り返す。
 大勢の使用人にかしずかれ、何不自由なく暮らしていたころとは真逆の日々――リナルドに出会ったのは、そんな放浪のさなかだった。
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