天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
氷室先生はジャケットのポケットに手を突っ込み、苦笑いしながら返した。
さっきスマホ見ててズボンのポケットに入れてましたよね。
あえて嘘をつくということは、先生は岩井さんに個人的な連絡先を教えたくないのだろう。
先生に言い寄ってくる女性も多いから仕方ないことだと思う。
そう言えば、先生……彼女には『僕』ってちょっと他人行儀に言ってた。
「またね、岩井さん」
氷室先生は岩井さんに軽く手を振り、私を連れて歩き出す。
「いいんですか?あんな美人振っちゃって」
「いいんだよ。基本的にああいう誘いは断ることにしてる。冷たいと思われるかもしれないけど、それがお互いのためだし」
先生の言葉に驚き、まじまじと彼を見つめた。
「先生って来るもの拒まずかと思ってました」
いつもにこやかで、仕事が終われば毎日違う女性とゴージャスなデートをしているイメージ。
「女性と楽しむより、茉莉花ちゃんとご飯食べる方が楽しいし」
「先生、私も一応女ですけど」
そんな突っ込みを入れる私を見つめ返して、微笑んだ。
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