天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
「どうも。ちょっと仕事で」
軽く会釈するが、カップを持つ手が震えてソーサーに戻した。
「病院の人に聞きました。小鳥遊総合病院で医療事務の仕事をしているそうですね。僕のせいで茉莉花さんに怪我をさせたことは申し訳なく思っています。ですが、やっぱりあなたのことは諦められない。僕と付き合ってくれませんか?」
「すみません。私はあなたと結婚なんて考えられません」
田辺さんの顔を見るのを避けたくてカップの中のコーヒーをじっと見つめながら答える。
そんな私の向かい側の席に座り、彼は声を潜めた。
「大人しく僕の言うことをきいた方がいいですよ。ここだけの話、片岡製薬は海外のメーカーから買収の話を持ち掛けられている。ここ最近業績が悪化してますからね」
寝耳に水の話に驚いた私は、彼に目を向けて反論した。
「嘘です!そんな話父から聞いたことない」
「そりゃああなたは経営には携わっていませんからね。まあ、聞いてもかわいい娘には隠し通すでしょう。僕と結婚すればお父さんの会社を助けられますよ」
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