天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
「茉莉花ちゃん、これスマホの音でしょ?ずっと鳴ってるけど、出なくていいの?」
先生が私に尋ねるが、笑って誤魔化した。
「いいんです。どうせ兄だと思うので」
「俺のことでなにか言われてる?だったら、俺がお兄さんと話をするよ」
「いえ、大丈夫ですから」
そう言ってベッドから先生を遠ざけようとするも、先生は「いいから」と言って布団をガバッと退けた。
「待って!」
名刺を見られる!
慌てて手で名刺を隠そうとしたが、間に合わなかった。
「あっ、電話は鳴り止んだな。ん?これは……田辺の御曹司の名刺?どうして持ってるの?」
先生は名刺を手に取り、私に視線を向けた。
「それは……」
タイミング悪すぎ。
電話がかかって来なければバレなかったのに。
動揺してしまってうまい言い訳なんて思い浮かばない。
「茉莉花ちゃん、なぜ君が田辺の名刺を持ってたか聞いてるんだけどな」
声は優しいけど、その笑顔がブラックに見えるのは、自分が田辺さんの話を内緒にしているせいだろうか。
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