天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
「茉莉花ちゃん、どうして黙っているの?この状況から考えて、田辺に電話しようとしてたんじゃない?」
布団の中にスマホと名刺を隠したのだ。
当然そう考えるよね。
下手な嘘をついても無駄だとわかってはいても、本当のことは言えない。
これは私の家の問題だ。
先生に心配をかけたくない。
「これはなんでもないです」
説明になってないけど、先生から顔を逸らしてそう言い張ったら、彼が私の頬に手を添えてきた。
視線を合わせたくなくてギュッと目を瞑る私に、氷室先生は静かな声で告げる。
「茉莉花ちゃん、今日ホテルで田辺を見かけた。医療機器の売り込みに来たんだろうけど、君も彼に会ってなにか言われたんじゃないの?カフェに行ってからずっと様子がおかしいよ」
先生にはバレバレ。
とても隠し通せないけど、今先生に打ち明けてしまったら、私の決心が鈍る。
「本当に……なんでもない」
ギュッと拳を握って言葉を返す私に、彼が根気強く言った。
「だったら、ちゃんと俺の目を見て言って。俺には茉莉花ちゃんの心の声が聞こえるよ。「先生、助けて」って」
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