天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
スマホのそばにあった名刺をよくよく見て顔をしかめる。
今日会場で田辺の姿を見かけた。
学会に医療機器メーカーが機器の売り込みをするのはよくあること。
なるべく茉莉花ちゃんと鉢合わせしないように注意していたのだが、どうやら俺がいない間に田辺と会っていたようだ。
彼女の様子がおかしかったのも彼に会ったからだろう。
「それは……」
俺の追及に彼女は言葉を詰まらせる。
だが、この件は有耶無耶にできない。
ちゃんと向き合って話をしないと。
「茉莉花ちゃん、なぜ君が田辺の名刺を持ってたか聞いてるんだけどな」
優しく聞いても彼女は話してくれない。
「茉莉花ちゃん、どうして黙っているの?この状況から考えて、田辺に電話しようとしてたんじゃない?」
少しずつ言い訳できない状況に持っていくが、それでも彼女は頑なな態度は崩さなかった。
「これはなんでもないです」
俺と視線を合わせずにそう返す彼女。
嘘をついているのは明白。
茉莉花ちゃんだって俺に嘘だとバレているのはわかっているはず。
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