天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
私は人を好きになる感情が欠落している。
どんな男性に会っても胸はときめかない。
だけど、別に不幸とは思っていない。
病院とアパートをただ往復する単調な生活。
それが私が望むもの。
唯一の楽しみは読書くらいで、テレビもあまり見ないし、同僚と飲みにも行かない。
刺激なんてなくていいのだ。
穏やかな日常が一番。
働かなくても生活できるなら、ひとりで山にでも籠もりたい。
そんな願望を口にしたら、『そのうち仏門にでも入るんじゃないだろうな』と父や兄に心配された。
恋愛イコール幸せじゃないよ。
恋愛しなきゃまともな人間扱いされないなんておかしい。
常々そう思っていたから、先生の言葉が胸に響いた。
だって、今までそんなこと言う人、周りに誰もいなかったから。
そうだよね。
私は……私でいいんだ。
「氷室、たまにはいいこと言うじゃないか」
小鳥遊先生がコーヒーを飲みながら褒めると、氷室先生はキメ顔で笑った。
「いや、俺はいつもいい事言ってるよ」
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