天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
そのまま通りすぎることが出来なくて声をかけた。
「ああ。兄を待っていて……」
スマホを見ていたその青年は、顔を上げて私を見る。
兄……か。
やっぱり樹に似てる。目元とかそっくり。
「ひょっとして氷室樹先生のご家族の方ですか?」
思い切って尋ねたら、青年はちょっと警戒した顔になる。
「氷室樹の弟だが、あんたは?」
「やっぱり。私は氷室先生の隣に住んでいる者です。勤務先も一緒で。さっきまで一緒だったんですけど、先生は病院に寄られてて帰りは夜になると思います」
「さっきまで一緒ね。岡山で学会があったって聞いてるが、あんたも医者なの?」
「いいえ。私は病院で事務の仕事をしていまして。先生と連絡つかないのであれば、うちに来ますか?」
どうせ家は隣だし、私の住んでる部屋も元々樹のもの。
そう言えば、部屋の契約とかガスや電気代の支払いはどうなっているんだろう。
樹にあとで確認しないと。
私の提案に彼は数秒考えて「それじゃあお願いします」と返事をした。
その流れで私の部屋まで連れてきたのだけれど、樹の弟さんは私の部屋を見て表情を固くする。
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