天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
俯いて返事をしてそのまま樹の顔を見ずに診察室を出ようとしたら、頭をクシュッとされた。
「今日も俺のベッドで寝ていいよ」
樹が甘い言葉をかけるから、ついついその顔を見てしまった。
私が知っている誰よりも美形なその顔。
策士で意地悪で、でも……この上なく優しい。
「自分のベッドで寝ます」
ボソッと呟くように返して診察室を出るが、すぐに自分の発言を反省した。
あー、なんで私ってもっとかわいくなれないんだろう。
肩を落として廊下を歩いていたら、研修医の長野先生に声をかけられた。
「茉莉花ちゃん、元気ないけど、大丈夫?」
「あっ、長野先生、元気はあるんですがちょっと今反省中なんです。自分のかわいくない言動が許せないっていうか。もうちょっと素直になれたらいいのに。まだまだ子供な自分が嫌で」
ハーッと溜め息をつく私を見て長野先生は顎に手を当ててゆっくり相槌を打った。
「なるほど。氷室先生に対して素直になれないと」
「いや、氷室先生に対してじゃなくって……あの……その……いつもの自分というか」
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