天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
らしいというのは、樹の命令で私は午後はずっとナースステーションに閉じこもっていたから。
「まあそんなところかな」
樹は曖昧に答えて私の隣に座る。
「やっぱり、田辺さんはもう私には興味ないんじゃないですかね」
私の発言に一瞬微妙な空気が流れ、樹と兄が顔を見合わせ、ハーッと溜め息をつく。
「なに?私変なこと言いました?」
ふたりの反応が気になって確認したら、まず兄が「この緊張感のなさに呆れる」と言い、次に樹が兄を宥めた。
「気持ちはわかるよ、隼人。いつもこうだから俺たちで守るしかない」
このやり取りはなんなの?
「あのう、ふたりで謎の会話しないでください」
意味が分からず私が文句を言うと、兄がメニューを差し出した。
「茉莉花、まず飲み物はなに頼む?」
メニューを見てビールにしようと思ったけれど、明日も仕事があることを考えてソフトドリンクにした。「烏龍茶かな。樹はなににします?」
「俺は生ビール」
樹がメニューも見ずにそう答えると、兄も「俺も生だな」と言って店員を呼ぶ。
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