天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
2、新しい生活
「香織さん、よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げると、先輩病棟クラークの大田香織さんは優しく微笑んだ。
「こちらこそよろしくね。茉莉花ちゃんが来てくれて嬉しいよ」
院長に異動を告げられた次の日、私は脳神経外科のナースステーションにいた。
セミロングの栗毛色の髪に人形のようにまん丸の目をした香織さんは、温和な性格で誰にでも優しく、私と同い年。
でも、短大を卒業してすぐにここに就職したらしく、キャリアが長い。
柔らかな笑みを浮かべながら仕事をさっとこなす彼女は私の憧れだ。
ここの病棟クラークは香織さんひとりだけだったのだが、そこに氷室先生の強い要望で私も加わることになった。
確かにひとりで回すのは大変だけど、どうして私が選ばれたのか。
即戦力にならないのにね。
「まだ頭が混乱してて、ここでちゃんと仕事できるかどうか……」
朝出勤してきたばかりなのに、すでにクタクタ。
それもこれも氷室先生のせいだ。
昨日勝手にアパートの引っ越しの手続きをされ、院長経由で私が築四十年の木造のオンボロアパートに住んでいたのが父にバレた。
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