天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
「じゃあ、食べようか」
俺が声をかけると彼女はコクッと頷いた。
「はい」
ふたりで席に着いていただきますをする。
いつもは向かい合って座るのだが、今日は彼女が心配で隣に座った。
彼女はまずコーンスープを口にして、ポツリと呟く。
「あったかい」
「クロワッサンもあったかいうちに食べた方がいい。はい」
俺がクロワッサンを千切って茉莉花の口まで運んだら、彼女は一瞬戸惑った顔をしたが、パクッと口に入れて小さく笑った。
「美味しい」
誘拐されてから初めて笑った。
そのことに安堵しつつ、茉莉花ちゃんの様子を見ながら自分もクロワッサンを食べる。
しかし、茉莉花ちゃんはクロワッサンをひとつ食べ終わると急に泣き出した。
「茉莉花ちゃん?」
ハッとして彼女を抱き寄せる。
「……怖かった」
そう俺に訴える茉莉花ちゃんの身体を強く抱きしめた。
「うん、怖かったよね」
「田辺さんにそのまま襲われるんじゃない……かって……」
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