天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
「そうね。元々綺麗だったけど、氷室先生に愛されて薔薇の蕾が綺麗に花開いた感じ」
彼女のコメントにハハッと苦笑した。
「香織さん、恥ずかしいのでやめてくださいって、あっ、私たちの出番ですよ」
慌てて彼女とステージに行き、クリスマスメドレーを演奏する。
一番前には朝子おばあちゃんや小児科病棟の子供たちがいて、緊張はしなかった。
演奏中、一番後ろで見ている樹と目が合う。
ドキッとして急に顔の熱が上がるが、ステージにいてはどうすることもできない。
毎日顔を合わせているのに、優しいその眼差しにいまだに心臓がドキドキする。
彼と同じ時間を過ごした分、愛が増えていくのかもしれない。
演奏が終わると、樹が「見てて癒された」と私に頭をクシュッとしてステージにあるピアノに向かう。
「え?あれ?氷室先生も出るの?しかも白衣でピアノ?」
ひとり驚いていたら、子供達にお菓子を配っていた長野先生がチラッと樹を見て微笑んだ。
「内科の先生が出られなくなって、急遽氷室先生が出ることになったんですよ」
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