天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
「あいつ、ピアノ上手いからな」
小鳥遊先生もいつの間にかロビーに来ていて、長野先生の横で子供たちに風船を渡している。
「氷室先生……ピアノ弾けるんだ。知らなかった」
樹って手先が器用だからなんでもできる。
それに考えてみたら、超がつくほどのお坊ちゃまだった。
樹がピアノを弾き出すと、周囲が急に静かになった。
映画のクリスマスソングや子供向けにアニメのテーマソングを弾くが、あまりに上手くて思わず聴き入ってしまった。
樹、ピアニストにもなれるよ。
演奏が終わると、拍手の嵐で、樹は爽やかな笑みを浮かべて一礼し、ステージを降りて私の元にやってきた。
「氷室先生、すごく素敵でした!」
私が興奮気味に樹の白衣を掴んで伝えると、彼はフッと笑みを浮かべた。
「ありがとう。ちょっとミスタッチしたけど、まあご愛嬌ってことで」
「先生〜、アンコール!アンコール!」
子供達が合唱のように叫び出すのを見て、樹の肩をポンと叩いた。
「呼ばれてますよ」
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