天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
だって、母は離婚してから女でひとつで私を育ててくれたから。
質素な暮らしにすっかり慣れてしまい、大学生の時に母が死んでも父を頼ろうとは少しも思わなかったけれど、父に強く説得され片岡製薬に就職した。
今思えば、それは失敗だった。
父の会社では兄と名字が違うから兄の女だと周囲に誤解されたし、父が勝手に設定した見合いのせいで知らない女の人に襲われて……。
それで痛感した。
母に引き取られた日から私は父や兄とは違う世界に住んでいるんだと。
私はもう片岡茉莉花ではない。
如月茉莉花として自分だけの力で生きていく。
自分の決意を父に伝えたら、ひとつ条件を出された。
『小鳥遊総合病院で働くなら、退職を認める』
その条件に従い、父の会社を辞めて、会社の寮も出た。
とにかく、片岡の家から離れる。
それしか頭になかったのだ。
自分で不動産屋を回って見つけてきたアパートは、和室でトイレも和式、壁は土壁と古い部屋だったけれど、私は気に入っていた。
家なんて最低限のものが揃っていればいい。
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