天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
引っ越しの話は、氷室先生の冗談かもしれない。
そんな希望を抱いて自分のアパートに行くと、もう引っ越し業者が来ていた。
そこへ仕事を終えた氷室先生もやってきて……。
『茉莉花ちゃんは貴重品だけ持って。あとはなにも心配いらない』
『私……引っ越すとは言ってませんよ』
『あのねえ、ここはダメだよ。近くに公園があるし、街灯も少ない、おまけに一階じゃないか』
普段穏やかな先生が厳しい口調で言うが、聞き入れられなかった。
『ずっと住んでますがなにも問題なかったですよ』
『運が良かっただけだよ』
私が猛抗議している間に引っ越し作業が進められ、気づけばアパートにはなにもなくなっていた。
『あっ……』
呆然とする私の手を『ほら、新居に行くよ』と氷室先生が掴んで、そのままタクシーに乗せられ引っ越し先のマンションにーー。
病院からも見える高層のタワーマンション。
その最上階に衣装部屋があった。しかも、隣が氷室先生の部屋。
衣装部屋を貸すというからてっきり別のマンションかと思っていたのに、まさか隣の部屋とは思ってもみなかった。
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