天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
「一生懸命やるのは当然ですよ」
真面目に答える私を彼女は温かい目で見つめる。
「うん。茉莉花ちゃんのそういうところ、うちの先生たちも気に入ってるんだと思うよ」
「はあ」
気のない返事をしつつも、心の中では別のことを考えていた。
要するに自分の容姿を見て騒ぐような女の子はここに入れたくないってことなのだろう。
氷室先生にとって一番大事なのは患者さん。
うん。そのプロ意識は尊敬する。
私もひとりでも多くの患者さんを先生に救ってほしい。
それに、氷室先生は自分のところのスタッフも大事にしている。
だって、事務員が困ってて動く先生ってなかなかいない。
事務員は事務員って線引きする先生がほとんどだ。
だから、もう先生に対して腹を立てるのはやめる。
私の母はくも膜下出血で亡くなった。
病院に運ばれた時、研修医しかいなくてすぐに手術してもらえなかったのだ。
もし、この病院に運ばれていたら……氷室先生がいたら、母は助かったかもしれない。
患者さんやその家族が苦しむ姿を見るのは嫌だ。
< 28 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop