天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
「おばあちゃん、すごいね。もう歩けるんだ」
私が前におばあちゃんの病室の前を通った時は、まだ寝たきり状態だった。
「茉莉花ちゃん、こんにちは。でもね、まだトイレまでしか行けないのよ。売店まで行きたいのにねえ」
目標があるのはいいことだし、排泄が自分でできるのは老人にとってとても重要だ。
「トイレに行けるって大事ですよ。なにか欲しいものがあれば売店で買ってきますよ」
優しく声をかけたらおばあちゃんは嬉しそうに目をキラキラさせた。
「お願いできる?折り紙が欲しくてね。折って子供たちにあげたいの」
「はい。後で病室に届けますね」
朝子おばあちゃんを病室まで見送ると、早速一階にある売店に行った。
折り紙と栄養ドリンクを手にレジに並んでいたら、氷室先生に声をかけられた。
「あれ、茉莉花ちゃん、折り紙買って鶴でも折るの?」
「いえ、これは朝子おばあちゃんにあげようと思って」
私の話を聞いて彼は優しい目で微笑んだ。
「そう。いいリハビリになるよ」
「先生もなにか買い物ですか?」
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