天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
氷室先生がニコッと笑うのを見て、鍵を開けて自分の部屋に入った。
早くシャワー浴びなきゃ。
バスルームに直行しようとしたら、バッグの中に入れておいたスマホが鳴った。
手に取ってみたら兄……片岡隼人からの着信。
きっとアパートの話を父から聞いてかけてきたに違いない。
今出たら長くなりそうなので出ないでおこうと思ったが、手が滑って通話ボタンを押してしまった。
今日はいろいろついていない。
《茉莉花?茉莉花?》
兄の声が聞こえてきて渋々電話に出る。
「はい、茉莉花です。お兄ちゃん、なにかあったの?」
《なにかあったのじゃない。ボロアパートに住んでたって親父から聞いたけど本当か?》
兄の質問を聞いて思わず眉間にシワが寄った。
「引っ越したから大丈夫だよ」
淡々と答える私を兄は質問攻めにする。
《引っ越したってどこに?》
「病院の近く。もう切っていい?私シャワー浴びたいんだけど」
着ている服からはポタポタと雫が滴っている。
いくら夏とはいえこのままでは寒い。
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