天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない～独占欲に火がついて、とろとろに愛されました～

仕方なくパクッと口にすると、優しい味がした。
「美味しい」
思ったままの感想を口にしたら、先生は温かい目で微笑んだ。
「よかった。さあ、もっと食べよう」
「先生、料理上手なんですね」
ポツリとそんなことを口にすると、先生は謙遜した。
「そんなことはないよ。自分が食べたいものしか作らないし」
先生の仕事は激務だ。
ちゃんと作るだけでも凄いと思う。
「私の兄は一切料理しないから偉いですよ」
なにも考えずに兄のことを話したら、先生はテーブルに片肘をついて私をじっと見た。
「お兄さんいるんだ？」
「ええ。三つ上の兄がひとり。すごく出来がいいのですが、私のことはいつまでも子供扱いで困ります。私もうアラサーなのに」
過保護な兄を思い出してハーッと息を吐くと、氷室先生は面白そうに目を光らせた。
「へえ、茉莉花ちゃん、アラサーなんだね。二十二くらいかと思った」
「二十七で、そんな若くないです」
淡々とそう返す私を見て、彼は苦笑いした。