天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
衣装部屋……。
外科医が衣装部屋持ってるって初めて聞いた。
でも、そんな怪しい話に私が乗ると思っているのだろうか。
先生所有の物件というのがなんだか怖いし、病棟クラークになったらこき使われるに決まってる。
それに、そもそも私には病棟クラークなんて務まらない。
「せっかくのお話ですが、病棟クラークなんて私には無理です」
受付事務と病棟クラークは同じ医療事務だが、仕事内容が違う。
受付は保険証を預かって患者さんを案内して会計をするのが主な仕事だけれど、病棟クラークは医師と看護師と連携してカルテの入力や患者さんの入退院の手続きなどをする。
その病棟の知識も多少なりとも必要だ。
「茉莉花ちゃんならできるよ。朝子おばあちゃんの時、ご家族に連絡をとって入院の手続きをしてくれたじゃないか」
「それは私も先生と一緒に救急車に同乗したから、成り行きでやっただけです」

あれは二カ月前のことーー。
病院への出勤途中、外来によく来る朝子おばあちゃんが歩道で倒れているのを発見した。
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