天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
俺は密かに「茉莉花マジック」と呼んでいる。
いつしかこれが儀式になって、ある時うちの病棟クラークの大田さんが病気で休んだ。
病棟クラークは元々各ナースステーションにひとりしかいない。
休めばその分仕事が溜まる。
そのことが明らかになったのは親友である小鳥遊が大田さんと幼馴染だから。
小鳥遊と俺はこの件を重く受け止めて、院長や脳神経外科部長とも相談し、もうひとり病棟クラークを置くことにした。
そこで俺が白羽の矢を立てたのが茉莉花ちゃん。
病棟クラークではないが、事務の仕事をしているし、勤務態度も真面目で医師や患者の受けもいい。
それに小鳥遊や俺を見ても他の職員のように騒がず、むしろ避けようとする考えが顔に出ていて、興味を引かれた。
なんというか邪険に扱われたのは初めてだったから面白かったのだ。
笑わない子と思いきや、患者さんや同僚には優しい笑顔を見せる。
俺の前でもごくたまにではあるが笑うことがあって、その笑顔を見ると心がなぜか温かくなった。
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