天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
身支度を整えて玄関を出たら、ちょうど氷室先生も出勤するところでばったり会った。
「気分はどう?」
挨拶代わりに尋ねて、先生は私が「よくなりました」と答えると同時に額に触れてきた。
「うん。熱ないね。よかった」
少しホッとした顔をする先生にお弁当が入った袋を差し出した。
「昨日は大変お世話になりました。お握り作ったんでよかったら食べてください。買い物に行けてなくてたいしたもの作ってないんですけど」
最初は驚いた顔をしていたが、先生は袋を受け取り嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう」
「あの本当にたいした内容ではないので、期待はしないでください」
一応念押しするが、「作ってくれただけでも有り難いよ。さあ、行こう」と私の背中を押して歩き出す。
エレベーターを待っていたら小鳥遊先生が現れて声をかけられた。
「おはよう。茉莉花ちゃん、もう大丈夫なのか?」
「あっ、おはようございます。先生もこのマンションに住んでるんですね」
ビックリしながら挨拶を返す私を見て、小鳥遊先生は淡々とした口調で答えた。
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