天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
『朝子おばあちゃん、どうしたの?』
朝子おばあちゃんは、佐藤朝子さんといって八十五歳の小柄の患者さん。
縁側でいつもお茶をしているような穏やかな印象のおばあちゃんで、病院のスタッフには『朝子おばあちゃん』と呼ばれて親しまれている。
『おばあちゃん、大丈夫?』
倒れているおばあちゃんに何度も声をかけるが反応がない。
どうしよう〜。
車に轢かれたような外傷はない。
心臓発作?
それとも……。
母が台所で倒れていた時の光景が頭に浮かび、怖くて身体が震え出した。
変に動かしてはマズいよね?
ああ〜、どうすればいい?
パニックになりながら、バッグからスマホを取り出す。
『とにかく……救急車』
そう呟きながらスマホを操作しようとしたら、上から声が降ってきた。
『どうした?』
顔を上げたら、そこにいたのはうちの病院で一番有名な先生。
脳外科医ー氷室樹。
神の手を持つと言われている先生だ。
『先生、あの……朝子おばあちゃんが倒れてて……声をかけても動かないんです』
震える声で伝える私の手を掴み、彼は小さく微笑んだ。
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