天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
冷たく言い放つ私を見て兄はおろおろし出した。
「おい茉莉花、ちゃんと話を聞け」
「話を聞いていないのは片岡さんの方です。ここにいては皆さんの迷惑になりますので、どうぞお引き取りください」
故意に兄を名字で呼び、他人行儀な態度で一礼して医局に向かう。
「茉莉花!」と兄の声が聞こえたが無視した。
今はもう兄の顔は見たくない。
医局のドアの前まで行くと、フーッと息を吐いて心を落ち着ける。
「失礼します」
ドアを開けて中に入ると、氷室先生と小鳥遊先生がいた。
向かい合って座っていて、先生たちの机の上にはパソコンや医学書などが置かれている。
奥には仮眠室、窓際には黒いソファとテーブルがあるし、棚にはコーヒーマシンや電子レンジが置かれ、先生たちは自由に飲食しているらしい。
カップ麺も置いてあるけど、香織さんの話では食べるのは研修医の長野先生くらいとか。
つまり、氷室先生はカップ麺作る時間も惜しくてチョコを食べるってことだ。
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