天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない～独占欲に火がついて、とろとろに愛されました～

その言葉が胸を打つ。
視界がボヤけて、目から大粒の涙が溢れ落ちた。
「あれ……あれ……？」
自分の手で涙を受け止める私を先生がそっと抱き寄せる。
「辛かったね」
優しい声が私の心の奥の琴線に触れて、涙が止めどなく流れた。
先生は私が落ち着くまで胸を貸してくれたが、誰かが入ってきて慌てた。
「氷室先生、午後のオペなんだけど……ってお邪魔だったかしら？」
それは麻酔科の中山紗羅先生。
年は三十くらいに見える。
モデルのように背が高く、ショートヘアの美人先生だ。
「あの……その……これは違うんです」
パッと氷室先生から離れてあたふたしながら言い訳する私を見て中山先生がキラリと目を光らせる。
「ひょっとしてあなたが茉莉花ちゃん？」
「……はい、そうです」
キョトンとしながら返事をしたら、中山先生がヒール音を響かせてこちらにやってきた。
「小鳥遊先生からいろいろ話は聞いてるわ。うちの樹、よろしく頼むわ」