天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
6、俺だけのものにしたい
手術を終えて医局に戻ろうとしたら、病棟の方から走ってきた茉莉花ちゃんとぶつかった。
「あっ、ごめんなさい」
俯いていた彼女が顔を上げ、俺と目が合う。
その顔は真っ青で、一目見てなにかあったと思った。
「茉莉花ちゃん、どうしたの?顔色悪いよ」
「先生……」
俺を見て少し安堵した表情をするが、「な、なんでもないです」と答える彼女の声は震えていて放っておけなかった。
「なんでもなくない」
医局に連れて行き、彼女から話を聞く。
身体が震えているのに、なんでもないという主張を繰り返す彼女に、少し厳しい口調で言った。
「茉莉花ちゃん、正直に言って。でなきゃずっとこのままだよ」
彼女は優しい子だ。
俺の手を煩わせたくないのだろうが、身近な人を救えないようでは、患者を救うことなんてできない。
「茉莉花ちゃん、俺ってそんなに頼りにならない?」
言うのを躊躇う茉莉花ちゃんにそう問い掛けると、彼女はポツリポツリと話し出した。
「今日入院した患者さん……田辺さんのご家族が……私の見合い相手だったんです」
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