天才脳外科医の愛が溢れて――もう、拒めない~独占欲に火がついて、とろとろに愛されました~
「そうだな。だから余計守りたいって思うのかもしれない」
「女を気晴らしの道具程度にしか思ってなかった氷室の口からそんな言葉が聞けるなんてな」
「俺が一番ビックリしてるよ」
自虐的に返したその時、げっそりした顔をして長野が医局に戻ってきた。
「はあ〜、なんか田辺の御曹司の対応疲れる。茉莉花ちゃん急に消えちゃうし、根掘り葉掘り彼女のこと聞くし。あのふたりなにかあるのかなあ」
ドサッと自分の席に座ってペンを弄ぶ長野に茉莉花ちゃんから聞いた話をする。
「茉莉花ちゃんが昔見合いをした相手らしい。茉莉花ちゃんは断ったみたいだけどね。それで、なに聞かれた?」
「いつからここで働いてるのか?とか、毎日来てるのか?とか。最近うちの病棟に来たから、よくわからないってとりあえず言っておきましたけど」
「そうか。茉莉花ちゃんに田辺を近づけるな」
長野の口振りからすると、まだ茉莉花ちゃんを諦めていないのかもしれない。
片岡製薬の社長令嬢としてではなくて、彼女自身が欲しいとなると厄介だ。
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