ヤンデレ社長の婚約者なんて、お断りです！

ごく普通の家に生まれ、ごく普通の学校に通い、ごく普通の友達に囲まれるーーー。そんな人物の目の前に突然お金持ちのイケメンハイスペックな人物が現れ、愛を囁くなど少女漫画の中でしか存在しない。そう、十七歳の女子高生である天野瑠愛（あまのるあ）は思っていた。しかしーーー。

「瑠愛、おはよう。学校まで送ってやろう」

朝、瑠愛が学校へ行こうと都内の公立高校の制服を着て家を出ると、家の前にギラギラと高級なオーラを漂わせた外車が並んでいる。そしてそのドアが開き、高身長で艶やかな黒髪、スーツ姿でさえ華やかに見える男性が姿を見せる。その姿を見て、瑠愛はため息をつきたくなった。

「四ノ宮さん、何度言ったらわかるんですか？別に送り迎えなんて必要ありません！お嬢様じゃあるまいし……」

「何言ってるんだ？お前は俺の婚約者だろ？婚約者を送り迎えするのは当然だ」

瑠愛を迎えに来た男性ーーー四ノ宮秀一（しのみやしゅういち）は優しい笑顔を向け、瑠愛を車に乗せようとドアを開けた。