ヤンデレ社長の婚約者なんて、お断りです！

「大切な婚約者がこうして隣にいるのは嬉しいな」

運転をしながら秀一が言い、瑠愛は「婚約してません！勝手に決めないでください！」と反論する。

「大体、十歳も歳下の未成年を口説くって、周りから変な目で見られるんじゃないですか？あと、一歩間違えば四ノ宮さんは犯罪者になるかもしれないんですよ？」

瑠愛がそう言うと、車が突然道端に停車した。学校まではまだ少し距離がある。何事かと瑠愛が運転席の方を見れば、秀一としっかり目が合った。彼は、まるで狩りをする時の肉食獣のようなギラギラした目をしている。だが、そんな恐ろしい表情ですらとても妖艶で、瑠愛の胸がドキッと跳ね上がってしまう。

「……歳上の男は嫌か？」

秀一の手が伸びてきた刹那、瑠愛の体が倒れてしまう。秀一にシートを倒されたのだ。それに瑠愛が気付いた時、秀一は瑠愛に顔をグッと寄せているため、あと少しで唇が触れてしまいそうな、そんな距離にまで縮まっている。互いの息が、肌に伝わっていった。