猫を拾った
恨むべきは父ではない。愚かな自分だ。

不倫をしたから、離婚した。
父には十分な収入があって、私を育てることは容易だった。


金には困ったことは無かった。

父は大手のプログラマーで、仕事はかなりできる方。

家に帰るのが夜遅くなる代わり、きちんと働いた分は収入として入ってきていた。


年収1000万以上。


そんな男を、自分が不倫したことによって逃した。

父が恨まれる点はあっただろうか?



「......きっとどこかで、お前のことをまだ想い続けているんだろう」


「私、を...」


「本来の依頼内容では、お前も殺すように命じられていた」


「え?」


「もしくは、傷一つなく連れてくるように」



“興味が無いから忘れていた”、なんてことは真っ赤な嘘だったらしい。

他の席にいる家族は何やら楽しそうなのに比べ、私たちの間には冷たい空気が流れていた。



「安心しろ、俺はトウキョウに戻っても、お前をあの女の元に連れていくつもりはもうない」


「もう、って...」


「気が変わった。お前がこんなに、猫らしくて可愛いとは思っていなかった」



アキさんは、表情1つも変えずにそう言った。
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