猫を拾った
「その手紙は、点字だった。触れなきゃ分からないその紙に毒が仕込まれていて、その事が手紙に書いてあった。」


「正解。盲目のピアニストは、点字が印刷された手紙を読んで、毒針が仕込まれていることを手紙の内容で知り、死を悟りました」


「難しいが、面白い内容だ」


「...実際、小さな点字に毒を仕込むのですから、中々殺せなさそうですが」



もう寝るぞ、私の考えを遮るように言った。
おやすみ、そう言って私に背を向ける。

私も背を向けて、目をつぶった。



目をつぶって聞こえてくるのは、パトカーの音。

あの警察官の、興味無さげな、父の死を告げる声。


でも、私にはアキさんを殺すことなんてできない。
人殺しを殺した人殺しにはなりたくない。

アキさんだって、殺さなきゃ生活が危うい。

金は稼げる時に稼ぐべきだ。


あの人だってきっと...アキさんを恨むなって、私を叱るはずだ。


落ち着いた低い声で、メガネの奥では目を細めて。

怒っているというよりは優しい声、でも威圧感のある雰囲気。


父に会いたい。

一週間後訪れる死に、私は耐えられるだろうか。
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