猫を拾った
「うわぁ...広いおうち」


「その奥の突き当たりの部屋、お前の部屋として使え」



着替えを取ってこい、そうアキさんに言われる。

軽く返事をしてその戸を開けると、広い部屋だった。
...こんだけ大きいマンションだ、広くたって不思議じゃない。

広い部屋にポツポツと置かれたベッドと机。

ベッドの上にある荷物から服を引っ張り出して、部屋から出た。



「風呂はここにあるから」


「はい、お先に失礼します」


「...食えないもん、なんかあるか?」


「いえ、なにもないです」



そうか、そう言ってキッチンの方に行ったのを見て、私も目の前の風呂場に入る。

風呂はガラス張りの戸で、映画のような雰囲気を感じる。

...確か、ゲームにもこんなシーンあったっけ。



「ふぅ...」



シャワーを浴びて、息を吐く。
風呂は確かに沸いていた。

しかし入る気になれなくて、頭に着いたコンディショナーを流して出る。

タオルでしっかりと拭いて、髪を高い位置で緩くお団子にする。


服を着て一息付き、スマホをつけた。



【お父さんが亡くなったって聞いたよ】

【ねぇ紫、今どこにいるの?】



大学の友達。
...ううん、友達なんかじゃなかった。

もっとそれ以上の関係だった。



【俺、心配だよ】



そのメッセージを横にスライドして、見なかったことにした。
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