猫を拾った
彼と付き合い始めたのは、高校生の頃。

高三の夏だった。



『もう、これで誰かを想うのは最後にするよ』



きっとその言葉こそが、私には重かった。
彼の最後。

最後だから...私が、最後まで...

まともに人のことを考えたこともなければ、まともに人と関わったことだってなかった。

彼は、そんな私に容赦なく関わってきた。


平気で色んなことを聞いてくるし、平気で踏み込んでくる。

それが、とても怖かった。



『本当に好きなんだよ、紫のこと』


『笑った時超可愛いし、人の話はちゃんと最後まで聞いてくれるし』


『きっともう俺、紫以外好きになれないよ』



自分に嘘をつくのは嫌いだ。
でも、他人に嘘をつくのは平気だった。


だから、付き合おうって言ったし、今までずっとそれを続けてた。


カラダの関わりも、彼氏彼女っていう関係も、きちんと覚えていたつもり。


何年も一緒にいて、でも、まだ彼を好きにはなれない。



「考え出したらキリがないな」



どうせもう、あと五日後には死んでるんだから。
あと五日間、無視すればいいだけ。
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