猫を拾った
『この男と、この子を殺してちょうだい』


『...ほう』


『確かに、今の私にはあの人がいる。...でも、紫のことが頭から離れないの』


『紫?』


『昔から頑張り者で、可愛かったのよ...だからこそ、穢れたこの世界はこの子には合わないわ』



母親としてそう思うのよ、女は不気味に笑っていた。

実の娘に、合わない世界だからと娘を殺させる。
俺には理解が出来なかった。


紫は、あの女を嫌っているようだった。

嫌って正解だ、そう思う。


きっとこいつは、結局は自分の母親だから...なんて夢を語って許したりはしない。


許せないものは許せない、紫ならそうする。


彼女は見た目は母親よりだが、中身はどうやら父親よりらしい。

確かに、あんなクズな母親を毎日見ていたら、そうなるのもうなずける。


俺の親は元気なんだろうかと、ぼんやりと顔を思い出す。


大人になってから、関わりが無くなった。
こんな仕事をしていることは、両親に言えるわけが無い。

言ってもいいのだが、すぐに殺すことになってしまう。



「...おやすみ、紫」



ベッドから降りて、俺は自分の部屋に戻った。
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