猫を拾った
それからどうやって警察署から家まで帰ってきたのかも、どうやって風呂に入ったのかも覚えていない。


でもドライヤーで乾かさなかったから髪は湿っているし、布団にちゃんと寝ている。

...それに、誰かが家にいる。


警察は今日の午後から捜索に入ると言っていて、それまでリビングには入るなと言われていた。

大体の捜索場所は決まっているからと、リビング、寝室、書斎だけには入るなと言われた。


家に誰かがいると気づいたのは物音。

それと、もう既に目の前にいるからだ。



「おはよう、起きたのか」


「...ひっ、人殺しっ...!」



低い声でそういう男はナイフを持っていて、私に馬乗りになっている。

それはここで私を殺すためのようだった。


そして私はすぐ、父を殺したやつだとわかった。


あの防犯カメラの男と同じだったからだ。



「......やめた」


「え...?」


「殺さない」



一重、黒髪、ピアス多め。
そんな若い人殺しが、私を殺さないと言った。



「......ついてこい」



準備をして出てこい、男は静かにそう言うと、私から降りて出ていった。
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