猫を拾った
「嬉しそうだったよ、アキさん」


「嬉しそう、ですか」


「自炊もするようになったし、何より家に帰る理由ができたって」



この前の、優里さんが律さんを引き付けているという話を思い出す。

アキさんも、同じだ。


私がこの家にいれば、死なせないようにと帰ってくる。

どれだけ喧嘩をしたって、どれだけ嫌なことをしたって。

きっと彼は、私を自分の手以外の方法では殺さない。


きっと彼は、最後、私を自分の手で殺すだろう。



「迷うなら、アキさんに話してみたらどう?」


「アキさんに、ですか」


「あなたは今、私を殺したいですかって。今日の帰りは早いって聞いたよ」



迷ったら聞かなきゃ、優里さんがそういう。
たしかに、迷ってばかりでは話は進まない。

何事も、まずは相談してみるべきだ。


そうだな、と思って、頷く。


少し時間がかかっても、死ぬ直前だったとしても、聞いてみよう。



「さ、ゲームしよっか」



優里さんが麦茶を片手で飲みながら、スタートボタンを押した。
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