猫を拾った
「自覚は無いかもしれないけど...紫、ここに閉じ込められてるも同然なんだよ」


「......」


「気づいてるでしょ?起きる頃には私がいて、私が帰る頃にはアキさんも帰ってきている」


「...どうでしょうね」


「頭が悪いわけじゃないんだし」



優里さんは、哀れむように私を見る。
過去の自分がそうであったように。

でも実際、彼女の言っていることは本当だ。


家を出るタイミングもなければ、家から出たところで家に帰る手段もない。

ここから出せと叫んでも、父が死ぬ元凶となった母を連れてこいと吠えても、何も無いのだ。



「でもきっと、頭が良いからこそここから出られなくなるんだろうね」


「...自分の、話ですか」


「さぁ?私は自分の意思であそこに残った」


「自分の意思じゃなくとも、出たところで帰る場所なんてなかったでしょう」


「それは間違いない。でも...私にはもっと大事な理由がある。紫とは、全く違う」



それは、私にここにいる意味は無いと言っているも同然だった。

私は、なぜここに残るのか。

彼女は知っているようで、何も知らないのだ。



「彼は、きっと私を殺してくれる。私が...私を殺したいという欲望を満たしてくれる」
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