猫を拾った
「律さんにも話してある、時間を稼いでって」


「え?」


「アキさんは、あまりにも異常すぎる...」



異常すぎるなにか。

なにが異常なのか、どこが異常なのか。


だってよく考えてみれば、彼は人殺しだ。
人殺しが、自分の悪事をバレない為にと監禁するのは、何らおかしい話ではない。

一週間の約束だってそうだ。


私を一週間で殺すのも、私をこれから永遠にあの部屋で生かすのも。

全ては、彼の過去が世間に明かされないためだ。


ここで私が公開してしまったらどうする?

私はいいだろう、酷いことをされた被害者だ。
しかし、彼はそうじゃない。

彼は人を殺すことだったとしても、犯罪だったとしても、それで生計を立てている。


私が、もし警察に行ったら...

彼は終身刑になるかもしれないし、死刑になるかもしれない。

同業者の律さんだって危うい。


間接的とはいえ、私も、結果的にアキさんを殺してしまうのではないか。


それが、ただただ怖かった。
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