猫を拾った
家に着いても、頭の中がスッキリしない。
紫の香りが、する気がする。


俺は確かに、紫を殺せただろうか?
...実はあの後、優里が救急車を呼んで生きてたりして。


紫を殺してしまったという事実に、思わず逃げだしてしまった。

殺すつもりはなかった。

そういえば、何とか俺の罪は軽くなるだろうか。


そんなつもり無かった、確かになかったんだ。
ただ、俺は紫を軽く脅すつもりで、連れて帰るつもりで。


それで帰ってきたら、何も無かったかのように晩御飯を作って、あたかも今日は6日目のようにするつもりだった。

丸一日眠っていたなんて事実を隠すつもりだったんだ。


また今日も残業せずに帰ってくるつもりだった。

たしかに、そのつもりだったんた。


あの日紫がここで眠っていたように、俺もソファーに横になって眠る。

今日だけは嫌な夢を見たくなかった。


今日だけは、何とか...


紫を心のどこかで感じてさえいれば、俺は罪から逃れられると思った。

なんとかして、彼女が生きているかのように感じてさえいれば。

二人分作ったご飯も、一人分余るけど。
一人分だけ、冷めていくけど。


ただ、彼女が生きていることを願っているしか、俺にはすることがなかった。
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