猫を拾った
「...だからお前をトウキョウに連れていくんだろう」


「え?」


「一人娘がいるなんて情報、どうでもいいから覚えていなかった」



この男は確かに、だから私をトウキョウに連れていくと言った。確実に。

耳を疑う。

私の耳は、いつからこんなに悪くなってしまったのか。



「お前は...まだ生きていたいだろう」


「......」


「まぁいい。1週間考えろ、死にたいというのなら俺が殺す、生きたいと言うならお前が死ぬ最期の瞬間まで俺が生かしてやる」


「1週間、ですか」


「...俺を深海魚と呼ぶ同僚がいてだな」



関係があるのかないのか分からない話をし出す。

聞く必要はないのだが、アキさんを深海魚と呼ぶその同僚のことが気になった。

...深海魚要素、あるだろうか。



「その同僚に“人間は監禁された時、自分を監禁した相手に人生最大の興味を持つようになる”、と教わった」


「は、はぁ...」


「ちなみに、そいつは実際自分が幼い頃から想っていた相手を攫って、今ではもう15だった女も20になった」



五年経ったのか、なんて考えて思うのは、アキさんの年齢についてだった。


見た目は若そうなイケメンだが、余裕そうな素振りから20代後半のような気もする。

...意外と30代とかだったりして。
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