猫を拾った
「お前は猫みたいだ」


「猫...あぁでも、言われたことあります」


「...別にそんな緊張せず、気ままに猫のように暮らせばいい」



金は有り余ってる、アキさんはそう言った。
金はありあまってるのに、どうして父を...


そんなことは聞けるはずも、言えるはずもない。

またひとつ言葉を飲み込んで、私も話す。



「猫みたいに、ですか?」


「...飼い猫は楽だ。狩りをする必要もなければ、天敵に襲われる危険性も低い」



確かに、家の中に蛇や鳥が入ってくるわけがなく、ましてやネズミなんて滅多に見た事がない。

生まれて1度もネズミをみたことないくらいだ、飼い猫は随分楽な暮らしができるんだろう。


狩りだって、一日何回か餌を貰えるし、餌どころかおやつをもらえることだってある。

トイレは勝手に片付けてくれるし、寝る時は飼い主の布団に入って暖を取れる。



「学校のことも父親のことも、これからのことも忘れて1週間過ごしてみろ」



お前が生きるなら俺が面倒を見てやる、アキさんがいったその言葉はまさに鎖だった。
< 8 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop