御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
調子も悪く、朝食すら作らず、一緒に起きる事が無かったので私が怒っていると勘違いしているだろう。
体調が回復の兆しを見せ始めてくると急に感じる罪悪感。

何故気付かない? あれしかないでしょう? と鈍感な玲音に心の中で責任を押し付けてきた数日間。

せっかく少し緩んできた彼の表情筋も形状記憶を取り戻したかのようにガッチガチに固まっている。

会場に着くと多くの人が玲音の周りを囲んでいた。

スーツを着た年配の男性やドレスを着た綺麗な女性が彼と笑い合っている。

私には営業スマイルさえ中々見せてはくれないのに何故あの女性にはあんな笑顔を見せているんだろう。

あれは営業スマイル? それとも……

「少しここで待ってね」と言う弘美さんの声で我に返りお辞儀をして弘美さんと別れた。

一人残された私はどう考えてもこんな場所は不釣り合いだ。

産まれた頃から恵まれている人々、成功した人々、意欲に満ち溢れた人々。

ここまで違いを見せつけられるとさすがの私でも身が縮む。

「シャンパンどうですか?」と175センチくらいの身長で黒髪短髪の切れ長の目が特徴的な端正な顔立ちの男性が声をかけてきた。年齢は20代前半だろうか。

「ありがとうございます」

「あまり見ない顔ですね。仕事? それとも誰かの知り合いですか?」
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