御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
喜一郎さんは私のことを恩人である勇の孫であり、勇がいなければ今のホテルウルーズがないことを伝えているが、壇上に上がった私は多くの視線を浴びて頭が真っ白になり、耳も水の中に潜ったかのように不鮮明な音しかとらえられていなかった。

それから会場内を玲音と回っていると誰もが一度は見たことがある政財界の重鎮や企業の社長、著名人などが私に握手を求めてくる。

私が握手したい人が私に握手を求めてくるなんてどんな下剋上物語ですか?

必死にミーハー心を抑え込み、完璧な婚約者を演じきった私はホテルの一室にうつ伏せで倒れ込んでいた。

高価すぎて持っていることが恐ろしく、アクセサリーは全て弘美さんに持って帰ってもらったがドレスと靴は着ておけばいいでしょうと言われ、そのままの恰好でベッドの上に倒れ込んでいる。

玲音は会場に残っていて、全てが終ったらこの部屋に来る予定だ。
今日はそのままホテルにお泊り。

そして私は今日ちゃんと彼に理由を伝えて仲直りをしようと心に決めていた。

うつろうつろな目を必死で開けて待っていると部屋の扉が開いた音がした。

身体を起こそうとしたが、疲れた体は中々いう事を聞かない。

両手をついて体を起こそうとすると上から彼が乗ってきて抱きしめてきた。
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