御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
「どうしたんですか?」

何も言わないが、いつもと違う。

彼も疲れているのだろうか……いや、玲音はこんな香水つけていない。

誰?

「きゃっ」

私が叫ぼうとすると口を手で押えられた。男性の手に間違いない。

怖い。何? オートロックのドアなのにどうやって入ってきたの?

「ちょっとくらいいいでしょ? どうせ玲音は満足させてあげられてないだろうし」

この声!

あたしは顔を彼の方に向けた。翼だ。

彼なら私達が泊る部屋も分かるし、鍵だって盗めるだろう。

「玲音と本気で結婚すんの? どんなビジネス交渉されたの? お金?」

何故それを?

「俺の婚約者、元々玲音と見合いして結納直前まで進んでいた()なんだよね。うちの経営にはなくてはならない取引先のお嬢様。まぁ、断ったのはその子なんだけど、身体で快楽教え込ませたら全部吐いてくれた。結婚はビジネスだから愛情なんて求めるなとか言ったらしいじゃん。美音ちゃんもそうなんでしょ? 愛のない結婚でいいの? 俺なら愛してあげるよ」

この人の愛はその他大勢にも与えられるチープな愛だ。

そんなもの私には必要ない。私は彼を睨みつけた。

「こうやって指を動かすとどんな女でも俺に落ちるんだ。女は体と心が繋がってるって本当なんだろうね」

彼は片手で私の口を塞いだまま、胸を揉んでいる。
こんな事で落ちるわけがない。
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