御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
「んんっ!!」

「そんなに気持ちいいの?」

違う。逃げたくて叫んでいるのだ。

「ああ、そんな反応するから俺も元気になっちゃったじゃん。責任取ってね」

彼は私を仰向けにするとドレスをまくり上げて下半身を押し付けてきた。

「止めてください」

「大丈夫。すぐに気持ちよくなるから」

「嫌です。なりません! ヤダっやめて!」

「うるさいな」

そう言うと翼は唇を奪ってきた。

「んっんん!」

嫌だ。怖い。

とその時、ガチャッと部屋の鍵が解放される音がした。そして扉が開かれ人が入ってくる。

彼は仲間も呼んだのか? それとも……。

「何している?」

玲音の声に翼はキスを止め、顔を上げた。

「何って見て分からない? 美音ちゃんと楽しもうとしてたところ」

「ち、違う。いきなり襲われたの」

「失敬な。玲音じゃつまらないって言って俺を連れ込んだんじゃん」

それを聞いた玲音は明らかに顔を引きつらせていた。

「そんなこと言ってない」

「さっさと美音さんを放せ」と玲音が怒鳴ると「これからだったのに」と残念そうに言いながら翼は体を離してくれた。

「今日は帰るぞ」

玲音はそう言うと私の手を取って起き上がらせ、歩き始めた。

こんなに感情を露わにした玲音は初めてだ。怖いという思いと同時に温かな淡い感情が生まれてくる。
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