御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
優しく玲音の唇がチュッという音とともに私の額に当たった。そしてまた指で頭を撫で始めた。

その手は徐々に下がり、私の頬を包み込んだ。

顔を見られているという事だろうか。急に恥ずかしくなってきた。

「誰にも触れさせない」

そう言って玲音は唇を軽く重ね、ベッドから起き上がり、部屋を出た。

何? 何今の? 独占欲ってやつ? ヤバイ、嬉しい。なんでか凄く嬉しい。

10分ほど経って私は起き、朝食を作りにリビングに向かった。

「……玲音……さん?」

「おはようございます。もう起きたんですね」

「は、はい。おはようございます。えっと、何をしているのでしょうか?」

「朝食を作っています。まだ数日は体調が悪いでしょうから、ソファーにでも座って待っていてください」

待っていてと言うが、キッチンにいる玲音の前にはスクランブルエッグと生卵が混じったようなものや、真っ黒に焦げた得体のしれない物などが置かれている。

私にこれらを食べさせようというのか?

「もう大丈夫ですよ。私がしますから」

「いいえ、これもいい経験です。あんなに簡単そうに美音さんが作っていたオムレツがこんなに難しいとは」

オムレツを作ろうとしていたのか。

そう言われてみるとチーズっぽいものや刻んだベーコンっぽいものが確かに生煮えのオムレツには入っている。
< 112 / 129 >

この作品をシェア

pagetop