御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか？
どうも私とこの地図の相性は良くないらしい。

スマホなら位置情報と連動し、間違った方向に進んでいればいくら方向音痴の私でも前後の間違いくらいは分かる。

文明の利器に頼れない今、アナログな地図と格闘を繰り広げ、駅から10分と謳われていたはずのホテルに到着することができず、歩き回ること1時間。

もしかして彼はそんな私をどこかのカフェのテラス席で見ていて助けに来てくれたのだろうか。

「お待ちしておりましたが中々いらっしゃらないのでお迎えに参りました」

「お、お迎え？」

私は一体いつ死んでしまったのだろうか。
いやいや、いくら天使のような美しさと言えどそんな突拍子もない展開ではない。

とすると……

「ホテルの方ですか？」

「ええ。チェックインの時間を過ぎても全然いらっしゃらないので探しましたよ」

チェックインの時間が過ぎても現れず、連絡もないとこうやって探しに来てくれるのだろうか。

さすがは5つ星ホテル。と言っても通常のホテルでもそういったサービスをしてくれるのかは分からない。

何故なら私が人生でホテルというものに泊まったのは学校行事を含めて指の数で事足りる程度だからだ。
それにチェックインの時間を1時間以上も過ぎた事なんて今までに一度もない。
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