御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
私への見返りは月々のお小遣い。彼の妻を完璧に演じれば月20万円を保証。
もちろん一緒に住むので家賃や食費一切は彼の懐からだ。

なんだかほっとした。

彼の言う特別は単純に彼の奥さんという特別枠に入ってもらう人であり、条件さえ合えば私じゃなくてもいいんだ。

最初から期待する必要がない。期待もなければ失望もない。

結婚という名の就職。

そう、咲羽玲音という会社に就職するだけだ。

「分かりました。宜しくお願い致します」

こうして私の再就職先が決まった。




翌日は、空港までホテルが用意したタクシーで来たため、彼の姿を見ていない。

帰りの飛行機は同じだと聞いていたがエコノミー席の前方に座った私は彼を見つけることができなかった。
きっと後ろの席に座っているのだろう。

空港で買った菓子折りを彼の家族は喜んでくれるのだろうか。

咲羽玲音という会社の親会社にも気に入られる必要がある。

母親は私に会いたがっていると言っていたそうだがマザコンなのだろうか。

彼との適度な距離を保たねばライバル視されてしまう。だがこれはビジネスなのだから、そこは上手くやれるだろう。
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